○「診療所」を抑制 「病院」手厚く
診療報酬は、医師の技術料などに当たる本体部分と、医薬品や医療材料費の薬価部分から構成され、ほぼ2年に1回のペースで改定される。
小泉政権下で始まった医療費抑制策によりマイナス改定が続いてきたが、2010年度改定では全体の改定率は0・19%増(本体1・55%増、薬価1・36%減)と、10年ぶりにプラス改定となった。
また、アップ率の配分は、「入院」3・03%増、「外来」0・31%増とされた。これは、外来中心の診療所への配分を抑制し、病院に重点配分する方針を明確にしたものだ。
個々の診療報酬点数を話し合う、厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会(中医協)」の審議で焦点となったのは、病院、診療所の再診料の統一だ。
再診料は、2回目以降の受診にかかる基本料金で、従来、病院(200床未満)600円に対し、診療所は710円と差があった。開業医の地域医療への貢献に配慮したものだが、体制の整った病院のほうが安いとあって、患者が病院へ集中する一因になったとされ、問題視されていた。今回、開業医らが引き下げに強く反対する中、690円に統一することで決着した。
ただし、かかりつけ医として24時間体制で患者の電話相談などに応じる診療所には、再診料に上乗せできる地域貢献加算(30円)を新設。地域医療の担い手として時間外も患者に対応する開業医に報いる姿勢を示した。このため、患者の窓口負担は、これまでとあまり変わらないと見ることもできる。
○患者負担は…高度な手術では増加も
勤務医の不足が深刻な病院の救急、産科、小児科、外科に重点配分され、報酬がより手厚くなった。そうした分野で病院にかかると、患者の自己負担分もやや増えることになる。
最も充実した体制と評価された救命救急センターは、入院料に上乗せされる加算が1日当たり5000円から1万円に倍増。救急搬送された妊産婦の受け入れ先がなかなか見つからなかった事態に対応し、救急搬送された妊産婦は入院初日の加算が5万円から同7万円に引き上げられた。早産などリスクの高い妊産婦の分娩管理は入院1日につき2万円だったのが3万円に増額、多胎妊娠などにも対象を拡大した。
新生児集中治療室(NICU)管理料は1日8万5000円から10万円にアップ。妊産婦受け入れ拒否の原因となっているNICU満床の解消策として、NICUを出た新生児を受け入れる回復室の管理料1日5万4000円を新設した。
外科手術では、脳動脈瘤の手術や帝王切開など主に病院で行われる難易度の高い手術は、手術料を50~30%増と大幅な値上げとなった。
例えば、切迫早産で病院(600床)に入院し、帝王切開した35歳女性の場合(表のケース2)、リスクの高い妊産婦の分娩管理にかかる加算など入院基本料への加算が9万円弱アップ、帝王切開の費用も4万円余り増えて、3週間の入院にかかった医療費は計13万円超上がる。ただし、自己負担額に上限を定めた高額療養費制度の適用で、自己負担(3割)の増額は1350円となる。
検診で脳動脈瘤が見つかり、手術のため病院(400床)に8日間入院した58歳男性(ケース3)は、手術料がこれまでより約40万円増額となる。が、ケース2同様、高額療養費制度により、かかった医療費全体の37万円程度が免除され、自己負担(3割)の増額は4390円にとどまる。
○診療明細書を全患者へ発行
手術や検査、投薬など、受けた医療の内容と個々の費用の内訳がわかる「診療明細書」が、医療機関の窓口で原則として全患者に無料発行される。レセプト請求を電子化している施設が対象で、厚労省によると、病院では9割、診療所は半数が該当する。
このうち、診療明細書の発行機能がついていないコンピューターや自動入金機を使っている施設は当面、義務化の例外とされた。現時点で対象でない施設でも、発行できるかどうかなどを院内に掲示することが義務づけられ、発行手数料を取ることは認められる。
診療明細書には、かかった医療費の内訳のほか、薬の名前や量、検査名なども具体的に書かれており、受けた診察や治療の内容が詳しくわかる。医療の透明化の観点から、医療事故や薬害の被害者らが無料発行を要望。国立病院機構の一部などでは、すでに実施されていた。(読売新聞)
厚生労働省は11月25日、レセプトの請求方法などについて定めた「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令」を制定した。オンライン請求と電子媒体による請求の両方を「原則」の請求方法とし、同列に扱うとした。改正省令の施行は26日。
厚労省はこれまで、2011年4月以降にオンライン請求を「完全義務化」とし、オンライン以外の請求方法では診療報酬を支払わないとしていたが、改正省令では、オンラインと電子媒体の両方を「原則」の請求方法とし、同列の扱いとしている。このため、これまでの「オンライン請求」は、「オンラインまたは電子媒体での請求」と読み換えることが可能で、報酬の支払いはオンラインと同じとなる。
厚労省は、「電子媒体による請求でも、医療保険事務の効率化、医療サービスの質の向上などの政策目標が達成される」としている。
また、現在手書きでレセプトを作成している医療機関については、枚数にかかわらず電子レセプトへの移行を免除するとした。手書きの医療機関の移行は「努力義務」になる。理由については、「レセプトコンピューターを使用していない医療機関の多くは、今後も継続的に費用対効果が見合わないと考えられるため」としている。
厚労省は10月9日に、レセプト件数が少ないか、常勤の医師などがすべて65歳以上の医療機関について、オンライン請求義務化の猶予を検討する改正省令の原案を公表。これに関して10-23日に実施したパブリックコメントでは、複数回答で、「医療機関の自主性に委ねるべき」(1006件)、「セキュリティ面に不安がある」(968件)、「本業である診察に支障を来す」(140件)、「費用対効果が低い」(139件)などレセプトオンライン化全般に関する意見が2769件、「手書き請求は件数に関係なく免除すべき」(86件)など省令案の内容に関する具体的な意見が217件寄せられた。意見総数は2220件で、このうち医療機関による意見が1497件だった。<CB>
▽厚生労働省
【労災レセプト電算処理システム】労災の請求や支払いに関するレセプト(診療報酬明細書)オンライン化のため、5億円を要求。システムにかかる保守料の見積額が高額などの意見が相次ぎ、業者への発注の仕方、コスト積算の抜本的「見直し」が必要となった。
【介護サービス適正実施指導事業など】地域包括支援センター職員らを対象に研修を実施。都道府県などに対し、厚労省が半額を補助している。08年度の当初予算4億7千万円のうち執行されたのが1億5千万円にとどまるなど、未執行分の多さが指摘された。国は関与せず、研修内容も含めて各自治体に任せるべきだと判定した。介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格更新などの際に行われる研修も、未執行の予算が多く、要求の3億円を半減し、研修内容を改善するよう求めた。
【生活保護費等負担金(医療扶助の不正請求対策)】厚労省はセーフティーネット支援対策等事業費として630億円を要求した。このうちの一部が、医療扶助費の適正化を図るための対策費。今年7月の奈良県の病院による不正請求事件を踏まえ、仕分け人は「レセプト点検の外部委託を進めるべきだ」と指摘し、10人全員が「見直し」と判定した。
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行政刷新会議のワーキングチームによる「事業仕分け」が11月11日から開始されたが、医療関連でも2010年度予算要求削減や計上見送りなど、医療界にとって厳しい内容になり、早くも問題視する声が上がっている。
中でも疑問が呈されているのが、「診療報酬の配分」。勤務医と開業医、あるいは診療科間の給与格差を平準化すべきなどというのが、ワーキングチームの結論。
11月13日に開催された中医協でも、山形大学医学部長の嘉山孝正氏は、「国立大学医学部長会議は慎重に議論をすることを求める声明を出すことを予定している。いったん決まってしまうと、容易には変更できない。中医協でも同様の声明を出すべきではないか」と問題提起。
京都府医師会副会長の安達秀樹氏も、「事業仕分け」で使用された勤務医・開業医の収入や診療科別の点数などのデータの不備を問題視、その上で「民主党のマニフェストを見ると、医療崩壊の認識があることが分かる。事業仕分けの内容は短絡的で、この政権公約と乖離していないか」と続いた。
さらに、茨城県医師会理事の鈴木邦彦氏も、「事業仕分けの議論を見ていると、非常に感情的。中医協は専門家が集まり、時間を費やして議論を重ねている。一方、事業仕分けの議論には、医療関係者はいないようであり、こうした方々が決めたものに中医協の議論が左右されるのはおかしいのではないか」と指摘した。
しかし、現在行われている「事業仕分け」はあくまでワーキングチームでの議論であり、「結論」は行政刷新会議自体がまとめる。それを基に12月に2010年度予算編成が進められるというスケジュールになる。こうした点を踏まえ、支払側は中医協として意見を出すことに対して慎重姿勢を示した。
嘉山氏は、「(中医協として意見を出すことに)反対意見を言った方は責任を取ってほしい。日本の制度で一番問題なのは責任を取ってこなかったことにある。不作為の罪はしたくない。慎重な議論を求めるための意見くらいは出してもいいのではないか。それすら言えない中医協にはどんな意義があるのか」と反論したが、結局は中医協として意見を出すことは見送られた。<m3.com>
レセプトオンラインシステムは、医療制度改革により強引に決められた側面もあり、医療関係者の義務化への抵抗は根強い。医療政策の中でも、大きな政治問題に発展する可能性があるだろう。今般の提訴以外にも日医、日歯、日薬のいわゆる三師会が共同して反対声明を出しているほか、地域の医療団体からも激しい阻止運動が盛り上がり始めている。診療所や200床未満病院など電子化が遅れている施設には導入のコスト負担を強いるし、地域医療にも悪影響を与えるというのがその理由だ。
08年7月に日医が発表した義務化に関するアンケート調査では、回答医療機関の8.6%が「対応できないため廃院する」との考えを明らかにしている。その大半が診療所で、うち6割近くは電子化への意欲が低い70歳以上の高齢医師だ。しかし、こうした高齢医師が医療を支えている地域も少なくなく、医療団体の「新たな医療崩壊の要因となる」は杞憂ではすまされない。このため、医師会などはオンライン請求は義務化ではなく、「手挙げ」による選択方式を求めている。[m3-news]
